20代でも年収400万円を超えたらマンションを…えっ?(2/2)
こんばんは、まろたです。
「分譲vs賃貸の記事かと思いきや、不動産投資のプロ向け記事だった」
住宅購入に関するネットニュースについて、前回から引き続き考察していきます。
借金は決して悪ではないが…
「安い金利で目いっぱい借入して、有望な対象に投資すれば儲かります」
筆者は結局、こういうことを主張しているわけですね。
これはビジネスの基本中の基本なので、当然そうでしょうねとしか言いようがないです。
このビジネスが儲かる理由は大きく3つあると思います。
・儲かるマンションを見定める能力があるから
・住宅ローンは借入期間が長く、金利が安く、減税もあるから
・大きな借金をして大きなリスクを負っているから
1点目については散々言っていますが、マンションの選定眼が20代の若者にあるでしょうか。
そんな人なら不動産の売買を本業にすればもっと大きく儲けられると思うのですが。
2点目は確かにメリットです。安く長期で借入できれば必要な収益のハードルが下がります。
そして3点目は企業で言う自己資本比率、財務健全性の問題と表裏一体です。
自己資本に対して多額の借入をすると、自己資本比率が大きく低下します。
PLの利益を求めてBSの財務バランスを崩している状態です。
全てが順調に進めば良いでしょうが、不測の事態に弱くなります。
筆者は自己資本について、頭金相当の貯蓄が必要としか言っていません。
具体的な例を考えてみましょう。
年収400万円で、3,500万円のマンションを購入するとします。
頭金として貯蓄してきた300万円を使います。
残りは、年収の8倍にあたる3,200万円の住宅ローンを組みます。
さて、この状態で本業の収入が途切れたとしたらどうなるでしょうか。
少なくともローンの返済はできなくなってしまいますよね。
そうなれば、せっかく買った家ですが手放すしかありません。
その時、住宅ローンの残債額よりも低い値段でしか売れなければ、債務超過です。
つまり、家を手放したのにローンだけが残る状態になってしまいます。
物件価格の約1割の自己資本しか無い状態でローンを組めば、1割値下がりしただけでそうなります。
どうでしょう。本業の収入がしばらく途切れる可能性ってそんなに低いと思いますか?
会社の倒産、リストラ、耐えがたいハラスメント、精神の不調…身近にリスクはありませんか?
今後家余りが予想される日本で、買った物件の値段が1割値下がりするリスクを無視できますか?
住宅購入における「得」とは何なのか
もう1点、住宅購入を考えるにあたって重要なポイントがあると思っています。
それは、住宅購入における「得」とは何を指すのか、ということです。
前回記事でも触れましたが、分譲と賃貸の比較には様々な切り口があります。
金銭面から見た場合、分譲の賃貸に対する優位性は「生涯住居費が減ること」です。
例えば家賃10万円で満足して暮らしている40歳の人が居るとします。
あと40年生きるとしたら、この先かかる住居費の総額は4,800万円です。
4,800万円以上の物件を買ったら、生涯住居費はかえって増えてしまいます。
管理費や修繕積立金、固定資産税等の維持費も物件が高いほど高くなります。
ニュース記事では物件の購入額が高いほど得をするような見え方になっています。
「20万円の家賃×20年」なら4800万円、「10万円の家賃×20年」なら2400万円に相当する人生のキャッシュフローの差となるのだ。
確かに家賃10万円の物件より20万円の物件の方が多少満足度は上がるでしょう。
でも、元々満足していたのなら、それは不必要に生活水準を上げてしまっただけです。
自分にとって必要十分な住居水準を知り、住居を決めることが大切だと思います。
このブログでも繰り返しお伝えしていますが、足るを知るということです。
そして、その適正な住居水準は家族の人数など、時の経過とともに変化します。
住宅を購入すると、その時々に必要十分な住まいを確保することは難しくなります。
もちろん、値上がりする物件を渡り歩けるなら、このデメリットも無視できます。
私にはそんな自信が無いので、住宅購入は慎重に考えています。
「三方良し」が長期的な利益を生む
現物のマンション購入は1物件あたり何千万円にもなる集中投資です。
それを自己資本が殆ど無い中、借入でやってしまおうというのは相当ハイリスクです。
「20代でも年収400万円を超えたらマンションを買いなさい」
うーん。
やはり勧めている内容の過激さの割に気軽すぎるフレーズに思えます。
読解力の問題なのかもしれませんが、世の中は読解力のある人ばかりではありません。
結局ニュース記事の一番の肝は「儲かる物件に投資すること」な訳です。
どうやってその儲かる物件を選ぶのかが分かれば苦労はありません。
筆者のプロフィールを見ると不動産のコンサルティングをされている方のようです。
「儲かる物件を選ぶには私に相談して下さい」と書いてくれれば、印象は違ったでしょう。
宣伝なら宣伝と分かるように書いて欲しかったと思うのは私だけでしょうか。
古くから伝わるビジネスの考え方に三方良しというものがあります。
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということ。
私はこの考え方は非常に重要だと考えています。
短期的に儲ける方法は色々あるでしょうが、長期では誠実なビジネスが利益を生むと思います。
最近勢力を拡大しているESG投資も似たような考え方だと思っています。
投資家が、環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)に対する企業の対応を考慮して行う投資
環境、社会、企業統治を重視することが結局は企業の持続的成長や中長期的収益につながり、財務指標からはみえにくいリスクを排除できるとの発想に基づいている
キャッチ-な記事で注目を集めることも大切ですが、ちょっと胡散臭い印象を受けました。
不動産コンサルタントは信用がとても大切なはずです。
短期的な注目を集めるために長期的な利益を失ってしまうのは勿体ないと思います。
住宅購入に際して考えなければならないこと
・賃貸と比較する場合、どの切り口で比較するか(金銭面、満足度、住居確保など)
・同じく、どんな条件で比較するか(住宅購入資金を賃貸では何に投資したと仮定するか)
・住宅ローンの利用による利益増と自己資本比率低下のバランス
・時と共に変化する必要十分な住居をどう確保するか
こんなところでしょうか。
以前から論点として取り上げたいと思っていた項目が殆ど出ました。
自分の考えを整理できましたし、良い機会をくれたニュース記事でした。
住宅購入については今後も書いていきたいと思います。
2回にまたがる長い記事になりましたが、お付き合い頂きありがとうございました。
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世の中は読解力のある人ばかりではない、というニュース記事を紹介しています。
投資を勧めるなら書き方に気をつけないと誰かの人生を狂わせてしまいかねません。